離婚時に親権を得られなかった方は基本的にお子さんの養育費を負担する義務を負います。
親権の決定方法は当事者同士の話し合いにもよりますが、多くの夫婦は離婚時に養育費をいくらにすると決めているのでしょう。
実際の離婚調停や離婚裁判の例を元に平均額を見ていきましょう。
子供一人当たり2万円~4万円が相場
夫婦間の協議や調停の結果、実に全体の45%の夫婦が子供一人当たり2万円~4万円の養育費を毎月支払うという結論に至っています。
金額は主に双方の収入によって決められます。
監護権を持つ側(育児をする側)の収入が高いとやや養育費は少なくなる傾向にあります。
つまり、母親が監護権を持って育児をするとなった際、母親一人で高収入を得ている場合はそれが考慮されて減額されるということです。
監護権を持たない側の収入が少ないと、無い袖は振れませんのでこれも養育費が低額になりがちです。
上記の例で言うと父親の稼ぎが少ない場合は養育費も減るということですね。
6万円以上の養育費を得られるのは5組に1組ほど
全体の8割の夫婦が6万円までの養育費で離婚が成立しています。
つまりそれ以上の養育費を払うと取り決められた夫婦は全体の2割(=5組に1組)です。
2万円しか養育費を得られない家庭もおおよそ5組に1組
養育費が毎月2万円以内となった夫婦も全体の18~19%ほど存在します。
旦那側の稼ぎが少なかったりする場合はこのような結果になります。
定められた養育費が少ないほどその後約束通り払ってくれる割合が下がっています。
残念ですが全体の夫婦の7割から8割は養育費の支払いが滞っています。
子供が複数いるなら人数分の養育費が必要
養育費とは子供に対して払うものですので当然その人数分支払うこととなります。
ここまでご紹介した数字はすべて子供一人当たりの金額になります。
しかし1人増えるごとに養育費は1万円ほど減るのが一般的です。
養育費をもらうタイミング
養育費は通常は月々の分割払いです。
毎月の生活費という意味合いのため一括で支払うよう相手に強制させることはできません。
お互いの同意のうえであれば一括払いにすることもできます。
しかし毎月数万円の分割ではなく一度にまとめて数百万円となると贈与税の対象になり税金が発生します。
損をしないもらい方
しかしながらできれば一括払いを要求することをお勧めします。
なぜならば統計上養育費がしっかりと払われているケースというのは全体の2~3割ほどと言われています。
つまり7~8割の夫婦は養育費を正しくもらえていないこととなります。
もしも相手が養育費を払わなくなった場合には家庭裁判所経由で支払いを勧告することができます。
それを「履行勧告」などと言いますが、残念ながら履行勧告には給料の差し押さえなどの強制力はありません。
ただし養育費を一括でもらう場合には一つデメリットがあり、それは贈与税が発生するという点です。
毎月4万円の養育費を10年分まとめて支払ってもらった場合にはその総額は480万円になりますが、概算ですがそれを一括で受け取るとその内約80万円ほどを贈与税として国に納めなくてはなりません。
養育費にかかる税金についてはもう少し詳しい内容をこのページ下部で解説します。
それと養育費は離婚後に継続的に支払うべきものですが離婚直後には大きなお金が動きます。
慰謝料や財産分与ですよね。
一体離婚をするとどういうお金が発生するのかについてまとめた離婚時の慰謝料や財産分与や婚姻費用の相場や決め方も参考にしてくださいね。
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贈与税を節税するのであれば毎月養育費をもらうことになります。
しかし重複ですがそれは支払いが滞るリスクがとても高いです。
月々の受け取りにするのであれば大切なのは離婚成立時に公正証書などを交わしているかです。
それにより相手が約束を破った際の強制力が違います。
それらの点について詳しくは離婚の進め方について記した下記をご参考ください。
養育費の原則とルール
離婚したあとも父と母の責任は同格です。
監護者として教育・世話をする人が母方になったとしても、育児を一手に引き受けながら二人分の生活費を稼ぐのは大変なため父方は金銭的に育児をサポートしていく必要があります。
たとえ自身が自己破産したとしても、それで養育費の責任が逃れるわけではないと考えられています。
自身の経済事情や夫婦関係と子に対する責任は切り離して考える必要があります。
養育費は子が「20歳」になるまで支払う
養育費はいつまで払う義務があるのでしょうか。
基本的に養育費が請求できるのは、原則として子が20歳になるまでです。
つまりよほどの特別な事情がない限りその子が大学を卒業するまで養育費を払ってもらうことはできません。
またその子自身が経済的に自立したと判断されるのであれば養育費の支払いを終了することもできます。
しかし学生生活と並行しながら行うアルバイト程度の収入では親の助けは不要なほど自立したとは判断されないため、引き続き養育費の支払いは義務として残ります。
養育費には贈与税や所得税はかかる?
原則、養育費に税金はかかりません。
ただしそれは既に解説をしましたが月々の分割払いで受け取る場合です。
一括受け取りとなると贈与税が発生します。
ちなみに所得税はどういった受け取り方であっても課税はされません。
ただし極めて高額な金額を養育費という名目で定期的に受け取っている場合は税務署の目が光るかもしれません。
その他離婚において発生するお金としては慰謝料や財産分与があります。
慰謝料や財産分与に所得税・贈与税がかかるのかについては別記事で解説をしていますのでご参考にして下さい。
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養育費を払えば扶養控除が受けられる
そもそも扶養控除とは何なのかという点から説明をすると子を金銭的に養っている場合は所得税などが減免されるという制度です。
扶養控除が適用される条件はいくもあり細かくは国税庁の扶養控除の概要ページをお読みいただければと思いますが、税法上の専門用語も多いためここでかいつまんで解説します。
- 子が16歳以上であること
- 子の合計所得が48万円以内であること
それが最低条件です。
それに当てはまっていれば、たとえ既に離婚が成立して自分と子供が別居していたとしても自分が継続的に養育費を払っているのであればそれは「子を扶養している」と扱われ、最大で63万円ほどの所得税の控除が受けられます。
その控除額は子の年齢にもより、子が16歳~19歳の間であれば38万円が控除の上限となります。
なおその子を「控除の対象となる扶養親族」として扱うには、「生計を同一にする」という規定があるのも事実。
しかし上記のように安定して養育費を払っていれば仮に別居をしていたとしても「控除対象扶養親族」として扱われます。
しかしながらその扶養控除を受けられるのは両親の内、片方だけです。
親権を持っていない親が払う養育費だけで子は育つわけではなく、監護権を持つ親は働きながら育児をして子のためにお金を得ています。
なので扶養控除をどちらが申請するのかは親同士で話し合いを行い、多めに養育費を払う代わりに控除はこちらが受けるといった取り決めも行われるケースがあります。
【離婚した後のこと】
離婚が成立して養育費をもらいながら一人で子育てをするとなった際、具体的にはどういった困難が待ち受けているのか。
事前に一つ一つ確認をして把握し、対策を練りましょう。
子供を育て上げるまでにかかるお金の総額
子供を産んでから大学を卒業するまでの22年間でどれだけのお金がかかるのでしょうか。
学校を公立にするのか私立にもよりますが、目安として3000万円ほどがかかります。
まず学費を除いた衣食住の金額だけで22年間で1600万円程。
そしてかかる学費についてですが、大学までを全て公立・国立の場合でその学費はざっと1000万円ほどになります。
大学だけ私立に行くパターンや高校から私立に行くパターンなどによって、その金額は1500万円以上にもなります。
(金額の目安は、ベネッセによる子育てにかかる費用のすべてを参照)
とても別れた配偶者からもらう月4万円程の養育費だけではまかなえませんよね。
そこで気になるのが、私立への入学などで学費が想定以上にかかることが確定したために養育費を増額することができるのか否かという点。
多くの弁護士事務所の回答を見ると「男女問題に強い弁護士に相談すれば請求も不可能ではない」といったやや曖昧な答えが並びます。
それもそのはず。
夫婦関係は千差万別であり、養育費を支払っている人の経済状況も十人十色なので養育費の増額ができるケースもあれば収入的にそもそも不可能なケースもあります。
ただしそういった理想論やルール上の話ではなく当サイトでは現実的なアドバイスをしますが、そもそも全体の8割近くのケースで途中で養育費の支払いが滞っているのに、そこからさらに養育費の増額が叶うケースなど極めて一握りのレアケースだということです。
子育てには想像以上のお金がかかるのか・・・と愕然とした方もいるのではないでしょうか。
はっきり言って養育費は当てにできません。
贈与税を国に納めるために実入りは減ったとしても、初めに一括で支払ってもらった方がまだ得策です。
残りの大多数のお金は自力で稼ぐという強い意志がなければ、とてもシングルマザーはやっていけません。
片親で育児と仕事をするのは大変か
兎にも角にもシングルマザーにはお金が必要です。
昨今ではあらゆる分野で「選択の自由」「生き方の多様化」が顕著ですので、夫婦間においても離婚の決断を下すことは、決して後ろめたいことでも稀有なことでもありません。
男として不甲斐ない旦那に見切りをつけて自分一人で子を養いながら生きていくかっこよさというのもあります。
誰に媚びることもなく自立している女性はかっこいいですよね。
しかし経済的な負担は非常に重くのしかかることにはしっかりと目を向けましょう。
いくらプライドを守ったところで、現実的に子供のために多くのお金を生み出さなくてはいけない義務は変わりません。
毎月の手取りが20万円前後なのであれば、子供を養いながらの生活はかなりギリギリです。
とても贅沢はできません。
人生において何を大切にするかは人それぞれですが、やはりたまには遊んだり羽根を伸ばすことでの人生ではないでしょうか。
常に仕事に追われ育児に追われ、時間的にも気持ち的にも経済的にも余裕のない毎日がここから20年続くと考えると、それはイヤだと言いだす人もいるでしょう。
それもまた正直な気持ちです。
365日休みなく労働と育児をして、一体自分は何のために生きているのか――。
もちろんそれは子供のためなのですが、では自分の人生は離婚をしたあの瞬間に幕を閉じてしまったのか?
旦那の浮気が原因で離婚したのに、今では養育費もまともに払わず向こうは自由気ままに生きてこちらだけが負担を強いられている。
・・・・というのはシングルマザーの方々が直面しやすい自問自答です。
しかし豊富な貯蓄もないのにシングルマザーになる決断をするというのは、嫌が応にもそういった余裕のない暮らしを選択するしかない人生に突入します。
離婚は決して恥ずべきことではありませんが、離婚を決断することで場合によっては今後10年~20年の生き方が限定されてしまうという事実は忘れないでください。
離婚をせずとも浮気をした旦那から慰謝料を請求することはできます。
現行の法の下では、旦那側が浮気をした場合は直ちに離婚をするよりも、婚姻関係は継続したまま対価を請求したほうがこちらの暮らしの安定が図れるという見方もあります。
シングルマザーの方々が大変な思いをしているのは周知の事実です。
当サイトもそういった方々の味方であり、少しでも正当な権利を勝ち得ると同時に不当な負担を強いられないためのアドバイスができたらと思います。